第92章 男を追うのに貸して?

四十がらみの料理長は、背も高く体格もいい中年男だった。

それが今は、背中をわずかに丸め、まるで「下の者」が上に伺いを立てるような姿勢で長谷川栞の前に立っている。

「店長?」

長谷川栞は首をかしげた。

「……私のことを、店長って呼んだの?」

どう見ても、目の前の男は長谷川グループの社員には見えない。

「先に下がって」

栞が疑問を口にするより早く、中野航平が淡々と告げた。

料理長は眉をひそめた。彼が従うのは店長の指示だけだ。だが中野航平の纏う雰囲気がただ者ではなく、思わず迷う。

長谷川栞が何も言わないのを見て、料理長は小さく頭を下げた。

「……失礼いたします」

そう言い残し...

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